PMI(Project Management Institute)が認定する国際専門職資格のポートフォリオマネジメントプロフェッショナル(Portfolio Management Professional)PfMP®︎についてご紹介します。
本記事は、2024年9月末時点の情報をもとに可能な限り最新の内容としておりますが、PMIにより変更となる場合がありますので、ご了承ください。実際に受験をされる場合はPMIのホームページをご自身でご確認ください。
目次
PfMP®︎資格の位置づけ
近年、企業・組織では戦略を策定し、経営計画を達成するために多くのプロジェクトを立ち上げて実行している状況で、プロジェクトの成果が戦略(経営計画等)の達成に貢献することが求められます。つまり戦略に整合したプロジェクトを実行することが重要となります。
こういった状況下で、海外では、プロジェクトポートフォリオマネジメントの取り組みが進んでおり、これらをマネジメントする上級管理職(ポートフォリオマネージャー、Enterprise PMOリーダー、役員:Chief Project Officerなど)が取得する資格としてPfMP®︎が位置付けられています。
また、経営関連やPMOのコンサルタントの方が保持しておいた方が良い資格ではと思います。
PfMP®︎資格保持者の数
全世界におけるPfMP®︎保持者は1,708名(2023年12月末時点:PMI 日本支部アニュアルレポート2023より)です。
私の方で、米国やアジアの主要国のPfMP®︎保持者数の直近の状況を調査しました。(2024年9月30日現在:PMIのCertification Registryより調査)
- アメリカ 485名
- サウジアラビア 418名
- インド 183名
- 中国 99名
- UAE 71名
- オーストラリア 48名
- シンガポール 22名
- 日本 20名
残念ながら、日本は少しずつ増えているものの、世界に遅れをとっている状況です。
PfMP®︎資格申請・試験について
PMIのホームページや、PfMP®︎試験のハンドブックに記載されている内容を要約してご紹介します。
詳細は、Portfolio Management Professional (PfMP)® Handbookに記載されていますのでご参照下さい。
資格取得の対象者
エグゼクティブ、上級レベルのマネージャー、PMOリーダーなど、組織の戦略に沿ったプロジェクトやプログラムを管理し、プロジェクトの優先順位づけなどを検討する方など。
受験資格
大学卒の場合、96ヶ月以上のビジネス経験(過去15年以内)と48ヶ月以上のポートフォリオマネジメント経験(高校卒の場合、ポートフォリオマネジメント経験は84ヶ月以上必要)
受験範囲(準備)
・The Standard for Portfolio Management (英語版)を熟読 (注)
・PfMP Exam Content Outline を熟読
・市販されているPfMP®︎問題集(洋書でAmazonなどから購入可能)を繰り返し解く
(注) “The Standard for Portfolio Management”の最新版はFourth Editionです。(2024年9月末現在)
2024年4月時点では、PfMP®︎試験のReferenceとしてThird EditionがPMIホームページで紹介されていましたが、最近その表記が見当たらなくなり、試験準備として、Fourth Editionが紹介されています(2024年9月末現在)。これはあくまでも私の見解ですが、Third EditionとFourth Editionの両方の内容から出題される可能性がありますので、両方目を通しておいた方が良いと思います。
追記: Third Editionは、一つ前の版ということもあり、どう入手すれば良いか?問い合わせを良く頂きます。
- 英語版は、PMIのホームページからPDFを入手することができます。(PMI会員でなくともアクセス可能)https://www.pmi.org/-/media/pmi/documents/public/pdf/certifications/standard-for-portfolio-management-third-edition.pdf?rev=67c367d7cf8f483d8e67f99af78205f7
- PMI日本支部が監訳した日本語版が発行されていましたが、今は新品を販売しているサイト等は見当たりません。Amazonやメルカリなどで時折中古が出ていることがありますので、探してみてください。ただ、英語での試験で英語版を読み込む必要がありますので、日本語版はあくまでも補助的に参照する用途でしょうか。
受験費用
PMIメンバー:$800、PMIメンバー以外:$1,000
資格取得までの流れ(①→②→③)
次の①、②、③の3つの関門があります。
① 申請書の提出
申請書を作成し(人にもよりますが、申請書の作成は約1ヶ月ほどかかる場合が多いです)、提出後、約10日間でPMIが申請内容を審査。申請書が受理されれば受験費用を支払い、②のパネルレビューにすすみます。
稀に、申請内容に偽りがないか等のauditに選ばれるときがあり、その場合は90日以内に要求されたエビデンス資料等を提出必要です。
申請書に記載する主な内容は以下。
1) ポートフォリオマネジメントの経験
自ら実施したポートフォリオマネジメントの経験を記述
(英文で約500words以内/ポートフォリオ)。
大卒の場合は48ヶ月以上のポートフォリオマネジメント経験を記載するが、48ヶ月に満たない場合は48ヶ月以上になるように複数のポートフォリオマネジメントの経験を記載する。
例)ABCポートフォリオ(36ヶ月)の経験と、XYZポートフォリオ(12ヶ月)の経験
2) ポートフォリオマネジメントの5つの領域における経験
5つの領域ごとに決められた質問に応えるかたちで自らの経験を記述する。
5つの領域とは、Strategic Alignment, Governance, Portfolio Performance, Portfolio Risk Management, and Communication Managementで、各領域ごとに英文で300〜500 wordsで記載する
PMIが申請書を受理するかどうかは、上記1)の内容で決まる。ポートフォリオマネジメント経験が乏しい、または記載が不十分と判断されれば、受理されず差し戻される。その場合は再提出の機会が与えられる。
② パネルレビュー
パネルレビューとは、上記の① 2)の内容を、PMIの経験豊富な特定分野の専門家(SME)が決められた基準をもとに審査するもので、申請書が受理されてから約60日の間に審査が行われ、結果の通知があります。合格であれば、次の③複数選択試験の受験資格を得ます。
不合格であればPMIからメールで連絡があり再提出の意思などを確認されます。
③ 複数選択試験
パネルレビューを合格した日から1年間が、複数選択試験を受験できる期間。
複数選択試験が不合格になったとしても、1年の間で、最大で3回まで受験できます。ただし2回目以降は追加の受験費用が必要です。
(再受験費:PMIメンバーは$600、PMIメンバー以外は$800)
複数選択試験は、170問(4時間)の試験で、170問の内20問は採点されない問題が含まれます。問題の言語は英語です。
出題範囲
ポートフォリオマネジメントの5つの領域から出題されます。
その出題比率は以下の通り。
・Strategic Alignment 25%
・Governance 20%
・Portfolio Performance 25%
・Portfolio Risk Management 15%
・Communication management 15%
合格の基準(正答率など)は公表されていません。
受験形式
この複数選択試験は、国内のテストセンターで受験する形式。
(Pearson VUEのテストセンターでCBT試験形式:2024年4月時点)
4時間のテストで途中トイレに行くなど離席は可能ですが、テスト時間は止まらないので注意が必要です。
170問を解き終わり、試験を終えると、試験結果(合否)が画面に表示されます。
(合格の場合は、Congratulations!と表示される)
複数選択式試験については、もう少し詳しい記事を投稿しておりますので、あわせてお読みください。https://p3moffice.com/2023/07/pfmp-test-prep/
その他所感(PMP®︎試験との相違など)
PMP®︎試験との主な相違は、言語が英語ということ、申請書でポートフォリオマネジメント経験を細かく記載すること、パネルレビューがあることなどでしょうか。
問題の多くは、ポートフォリオマネジメント標準やプロジェクトマネジメントやプログラムマネジメント関連のことから出題されますので、英語といってもそれなりの期間をかけて準備をすれば、問題にも慣れてきます。
経験を積まれているプロジェクトマネジャーの方や上級管理職の方、経営やPMO関連のコンサルタントの方など、このPfMP®︎の国際資格を取得し、ますます活躍されることを期待いたします。
受験のサポートについて
海外では、PfMP®︎資格取得をサポートする、教育機関やベンダーが存在しており、申請書記載のサポートや試験対策などを有料で提供しています。PMIが認定するATP (Authorized Training Partner)もPfMP®︎資格試験の準備コースなどを提供しています。
日本では残念ながら現時点でこのようなサポートを実施しているベンダーはありません。直接、海外のATPのコースに申し込んで、サポートを受けることが合格の近道かもしれません。
ただ、PMI日本支部のポートフォリオ・プログラム研究会では、日本におけるPgMP®︎やPfMP®︎の資格保持者を増やす活動を実施しており、セミナーや資格説明会等を年に数回開催しています。
既に終了してしまいましたが、2024年1月にPMI日本支部主催のPMI標準セミナー「ポートフォリオマネジメントセミナー」が開催されました。またPMI日本支部のスキルアップ研修「ポートフォリオマネジメント実践ワークショップ」が2024年11月29日に開催されます。
今後も、このようなセミナーが定期的に開催されると思いますので、PfMP®︎資格にご興味のある方や、プロジェクト・ポートフォリオマネジメントの理解を深めたい方は、PMI日本支部のホームページを是非チェックして下さい。
参考図書
プロジェクト・ポートフォリオマネジメントを解説する書籍を2023年9月に出版いたしました。プロジェクト・ポートフォリオマネジメントを日本語で解説する書籍は少ない状況で、PfMP®︎を受験される方には、知識を深めていただくためにもおすすめする書籍です。受験を考えている方は、ぜひお読みください。
以上、PfMP®︎(Portfolio management Professional)資格についてご紹介しました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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