〜 プロジェクト成功へ理解を深めるためのガイド 〜
近年は、外部環境な内部環境の様々な変化が継続的に発生し、その変化に対応すべく企業・組織では様々な施策を実行、つまり様々なかつ多くのプロジェクトを立ち上げて実行している状況かと思います。プロジェクトを計画通り遂行し、見込んだ成果・価値を創出することを目指すわけですが、プロジェクトのビジネスケースを明確にしているプロジェクトは、どのくらいあるでしょうか?
PMI (Project Management Institute) が主催するセミナーやワークショップに登壇させていただくことがありますが、その際にプロジェクトの失敗要因について、参加者の皆さんに確認しています。主な失敗要因として、「プロジェクトが複雑化している」「プロジェクトのサポートが十分ではない」などがありますが、「プロジェクトの目標が曖昧、不適切」という回答いただいた割合も比較的高い結果となっています。(2025年3月および5月に実施したセミナーにおいて確認した結果では約7割の方が該当)
企業・組織の戦略に沿って、プロジェクトを実行、成果を創出し、プロジェクトを成功に導くためにも、ビジネスケースを明確にしておくことは、重要だといえます。
では、このビジネスケースについて、どういった内容を明確にしておけば良いのかをご紹介いたします。
目次
プロジェクトにおけるビジネスケースとは
ビジネスケースは、プロジェクトが、ビジネスの戦略(経営戦略、経営計画など)の意図に沿って、期待する成果を創出すること等を明確に記載した文書です。企業・組織内でプロジェクトの方向性がビジネスの戦略と整合していることを明確にすることより、ビジネスケースは次のような位置付けの文書になります。
- プロジェクトを正当化する文書
- 意思決定者がプロジェクトを承認するための根拠となる文書
- プロジェクト進行中の「ガイドライン」として参照する文書
プロジェクトの立ち上げ時にビジネスケースを明確にすることはもちろんのこと、プロジェクト遂行中もプロジェクトが間違った方向となっていないか(つまり、プロジェクトが組織において意味を持ち続けているかどうか)を判断する基準にもなります。
ビジネスケースに記載する内容
一般的にビジネスケースには以下のような内容を記載します。
- プロジェクト名称(識別ID)
- 責任者(プロジェクトスポンサー、プロジェクトマメジャー)
- プロジェクト概要(プロジェクトの目的、なぜプロジェクトが必要なのか等の背景など)
- 戦略との整合(企業の戦略、経営計画、経営指標との関連を明確にする)
- プロジェクト期間
- プロジェクト予算(必要な資金の見積り)
- プロジェクトリソース(アサインする人材の想定)
- プロジェクトから得られる成果(アウトカム、ベネフィットなど) (※1)
- メトリクス(KPI)(得られるアウトカムやベネフィットを測定する際の指標)
- 投資ドライバー(課題や機会)(※2)
- 主なリスク
- 主要なステークホルダー
- その他、補足等(※3)
(※1)プロジェクトから得られる成果(アウトカムやベネフィットなど)を具体的に記載する。また投資回収(ROI, NPV, IRR)の観点で記載。アウトカムやベネフィットについては、別の記事「Output, Outcome, Benefit, Valueの違いとは?」に投稿していますのでご参照ください。
(※2)プロジェクトへの投資を率先して実施必要な要因(直面している課題解決や、ビジネス成長等の機会、新たな規制への対応など)
(※3)関連する(相互依存性のある)他のプロジェクトや、このプロジェクトがプログラムやポートフォリオのコンポーネントとして位置付けられる場合は補足に記載する
ビジネスケースのテンプレート
私が推奨するテンプレートは、俯瞰して見ることができるもので、なるべく1ページに要点がまとまっているものです。イメージとしては下図のような内容です。ここに記載する内容より更に詳しい情報は別紙参照とする形態をとります。

各項目が明確になっていることが理想です(曖昧なものについては、いつまでに決める等を記載しておきます)
このテンプレートにある項目、特に★印の項目が不明確なプロジェクトについては、冒頭に記載しましたが、何のために実施しているのか曖昧なプロジェクトで、期間をかけて労力や費用を費やして無事終えたとしてもプロジェクトが成功したかどうか疑問が残る結果になりかねません。
皆さんが所属されている企業・組織(コンサルの方であれば支援されている企業等)におけるプロジェクトで、ビジネスケースが明確になっていないものについては、一度このテンプレートに当てはめてみていただければ、そのプロジェクトの正当性が見えてくるかもしれません。
以上、皆さんのご参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。