〜 PMIの最近のイニシアティブを含めご紹介 〜
近年、ビジネスや組織運営の現場では、プロジェクトの数が飛躍的に増加しています。従来型の定型業務(オペレーション)だけでなく、変化やイノベーションを推進するプロジェクトが重要な役割を果たすようになりました。このような潮流は「プロジェクトエコノミー」と呼ばれ、企業や社会の成長の原動力として、プロジェクト型の活動が組織の中核になりつつあります。プロジェクトの成功が組織全体の価値や競争力に直結する時代が到来しており、プロジェクトマネジャーの役割はますます重みを増しています。
こういった状況で、近年、世界最大のプロジェクトマネジメント団体である、PMI(Project Management Institute)が、矢継ぎ早にいくつかの新たなイニシアティブを打ち出しています。この記事では、その情報をお伝えするとともに、プロジェクトマネジャーがプロジェクトを成功に導くために、どう進化する必要があるのかなどについて、ご紹介いたします。
目次
プロジェクトを確実に成功させる
プロジェクトを成功させることは、プロジェクトマネジャーにとって最も重要な役割のひとつです。しかし、ここでいう「成功」の定義は、従来通りではもはや十分ではないと言われています。これまでプロジェクトマネジメントでは「QCD(Quality, Cost, Delivery)」、つまり品質・コスト・納期を守ることがプロジェクトの成功の指標とされてきました。計画通りにプロジェクトを進め、無事にゴールへ到達することが重要視されていましたが(これはこれで重要ですが)、近年は少し変わってきています。
価値創出へのシフト
ビジネス環境の変化や顧客の多様化するニーズにより、プロジェクトの成功の定義は変わってきています。近年では単なるQCDの達成ではなく「プロジェクトを通じていかに新たな価値を創出できるか」が重視されるようになりました。プロジェクトは組織や社会にとって本質的な意味や価値を生み出す存在へと進化しつつあります。
PMIは2024年に、新たなプロジェクト成功の定義を打ち出しました。「労力と費用に見合う価値をもたらしたかどうか」で判断することを提唱しています。ではどのようにそれを測定するのでしょうか。PMIはNPSSという指標を設定しています。
プロジェクト成功を測る新指標:NPSS(Net Project Success Score)
従来のQCD(品質・コスト・納期)だけではプロジェクトの真の価値を測り切れない現在、客観的かつ包括的にプロジェクトの成功度を測る指標としてPMIが提唱したのが「NPSS(Net Project Success Score)」です。NPSSは、顧客のロイヤリティを測定するNPS(Net Promoter Score)の手法を適用したもので(参考書籍)、顧客・ステークホルダー・プロジェクトメンバーなど複数の関係者に対し質問を行い、その評価を数値化することで、プロジェクトの価値や満足度を総合的に把握するものです。
このスコアは、推奨者(プロモーター)の割合から批判者(デトラクター)の割合を引くことで算出され、数値が高いほどプロジェクトが多くの関係者から高く評価されたことを示します。NPSSの活用によって、QCDだけでは見えなかったプロジェクトの真の成功や価値創出に対する評価を、定量的に把握することが可能となり、今後のプロジェクトマネジメントの指針として期待されています。(以下の図はPMIの資料を引用し私の方で意訳したものです)

この詳細は、PMIのホームページより資料を入手することができます。詳細については次のリンクを参照ください。https://www.pmi.org/learning/thought-leadership/project-success
PMIの新たなイニシアティブ M.O.R.E.
では、プロジェクトマネジャーはどのように、プロジェクトの価値を創出していけば良いのでしょうか?参考になるのが、PMIが2025年に発表した新たな「M.O.R.E.」というイニシアティブです。https://www.pmi.org/learning/thought-leadership/path-to-project-success
プロジェクトマネジャーは従来の枠組みを越え、下記の4つの柱に沿って進化が求められると提唱しています。
- Manage perceptions(認識をマネジメントする):プロジェクトマネジャーは、ステークホルダーによってプロジェクト成功の定義・思いが異なることを認識し、ステークホルダーの理解を深め、プロジェクトライフサイクル全体を通じて、プロジェクトの進捗や価値をステークホルダーに正しく伝え、プロジェクトの価値の認識を積極的にコントロールする。
- Own success(プロジェクトの成功に責任を持つ):プロジェクトマネジャーは、タスクの完了やスコープ、予算、スケジュールの管理に加え、具体的なプロジェクトから創出される価値と認識される価値(ステークホルダーの認識)の両方を生み出すことに責任を持つ。
- Relentlessly reassess(絶え間なく再評価する):近年の絶え間ない変化を乗り越えるために、プロジェクトマネジャーは状況に合わせてアプローチを常に見直し、変化に柔軟に適応しながら改善を続けていく。
- Expand perspective(視野を広げる): プロジェクトマネジャーは、プロジェクトだけの狭い枠組みにとらわれず、組織内外の多様な視点・視野を広げ、自らの仕事が企業や社会にどのように貢献しているかなどを検討する。
以上、最近のPMIが提唱している内容、プロジェクトマネジャーがプロジェクトの価値を創出し成功に導くために実施していくべきこと等についてご紹介しました。
PMBOK®︎ 第8版における新たな記載
PMBOK®︎(Project Management Body of Knowledge)の最新版である第8版ですが、The Standard For Project Managementを含めて2025年11月に発刊されました。既にお読みになった方もいらっしゃると思います。ここでは詳細は割愛させていただきますが、価値創出にフォーカスする必要性が強調されています。(例としては、以下のような内容です)
- 3つのマインドセットのひとつに、バリュードリブン(Value-Driven)が記載されている
- 6つの原理原則のひとつに、全体感(Adopt a Holistic)や価値にフォーカス(Focus on Value)が記載されている
- パフォーマンス領域に、Finance Performance Domainが新たに追加されている


Relationship Between Project Management Principles and Project Management Performance Domain
これらは、単なる手法やプロセスのみならず、プロジェクトの目的・価値に常に意識を向け、ステークホルダーと共に最適な価値を追求する姿勢が不可欠という状況に沿ったものだと理解しております。前述のM.O.R.Eの内容と整合が取れている内容と言えます。
PMBOK®︎ 8th Editionは、PMI会員の方はPMIホームページ(https://www.pmi.org/standards/pmbok)からPDFがダウンロードが可能です。ペーパーバックはAmazonから入手できますので、まだお読みになっていない方は是非チェックしてみてください。
進化を続けるプロジェクトマネジャーへ
今後のプロジェクトマネジャーには、従来の枠組みを超えた柔軟な思考と、価値創出への強い意識が求められます。組織や社会にとって本当に意味のある価値を導き出すために、これからもプロジェクトマネジャーは重要な役割を担い、進化を続けていくことが不可欠となります。
補足情報:
PMIは昨年2025年のGlobal Summitで、PMP®︎資格テストをリフレッシュすることを発表しています。ご紹介した価値創出などPMBOK 8thに対応したもので、2026年7月から開始するとのことです。
また、プロジェクトプロフェッショナルの上級資格(PMPの上位に位置付けられる資格)を今後立ち上げることを発表しています。これは、より複雑かつリスクの高いプロジェクトを遂行する能力を備えたプロフェッショナルを認定するもので、今年2026年にパイロットを一部地域で実施中とのことです。
以上の内容は、PMIのホームページに掲載されていますので、ご興味のある方はチェックください。https://www.pmi.org/whats-next
以上、ここ最近の情報を踏まえ、これからのプロジェクトマネジャーが求められる役割について、ご紹介いたしました。ご参考にしていただけましたでしょうか。最後までお読みいただきありがとうございました。

