組織成熟度による”PMOのアプローチ”

近年、企業・組織におけるプロジェクトの数が飛躍的に増加し、プロジェクト遂行において、PMO(Project Management Office)の果たす役割は大きく、プロジェクトを成功に導くためには必須の機能となってきていると認識しております。ただPMOといっても様々なレベルがあり(ポートフォリオレベル、プログラムレベル、プロジェクトレベルなど)、またPMOが担う役割や実行する内容も企業・組織の状況により異なります。

  • PMOがどのような役割を担い実行すれば良いか?効果的か?
  • 何をもって判断すれば良いか?

といった質問をよくいただくことがあり、組織においても幾度となく議論されてきたかと思います。この記事では、ひとつの手法として「組織の成熟度をもとに検討するアプローチ」をご紹介いたします。まず第一弾として、プロジェクトレベルにおけるPMOのアプローチについて記載いたします。(今後、ポートフォリオレベル、プログラムレベルにおけるPMOのアプローチについても順次ご紹介していきます)

本記事は、英国AXELOSのグローバルベストプラクティスであるP3O®︎(Portfolio, Programme and Project Offices)の内容を参考にし、私の方で分かりやすくまとめたものです。ご参考にしていただければ幸いです。

PMOの様々なレベルについて

PMOのレベルとしては、ポートフォリオレベル、プログラムレベル、プロジェクトレベルがあり、そのレベルのよって提供する内容も異なります。

PMOのレベル概要

詳細については、以下記事「グローバル標準にみるPMOの種類・役割」で投稿しておりますので、ご参照ください。

PMOの組織成熟度によるアプローチ(プロジェクトレベル)

今後、ポートフォリオレベル、プログラムレベルにおけるPMOのアプローチについても順次ご紹介していきますが、今回は組織成熟度の観点からのプロジェクトレベルのアプローチについて記載いたします。

プロジェクトを実行する際に、組織において「プロジェクトマネジメント」がどの程度浸透しているか、組織的なプロセスに組み込まれているかなどによって、PMOの役割は異なってきます。組織において何が不足しているか、何をやれば良くなりプロジェクトの遂行・成功に効果的であるかを見極める必要があります。

そこで登場するのが「プロジェクトレベルにおける組織成熟度」になります。

組織成熟度(プロジェクトレベル)

(表をクリックいただくと拡大します)

皆さんが所属されている組織(コンサル等の方であれば支援されている組織)において、プロジェクトマネジメントを実行する際に、それぞれの項目(エリア)ごとに、どのレベルに当てはまるかをチェックしてみてください。チェックする項目(エリア)は以下に分類されています。

  • マネジメントコントロール: プロジェクトマネジメント(表ではPjMと記載)の実行度合い
  • ベネフィットマネジメント: ベネフィットマネジメント(実現計画等)の実行度合い
  • 組織・ステークホルダー : 組織の取り組み(ステークホルダーの関わり)度合い
  • リスクマネジメント   : リスクマネジメントの実行度合い
  • リソースマネジメント  : リソースマネジメントの実行度合い
  • ガバナンス       : プロジェクトガバナンスの確立度合い
  • ファイナンシャルマネジメント: プロジェクト財務コントロール(ビジネスケース)度合い

その他にもチェックする内容は多岐に渡りますが、ここではPMOが主に関わる内容である上記の7つのエリアに分類して記載しています。

組織成熟度からPMOのアプローチを決定する

上記の組織成熟度(プロジェクトレベル)をチェックした結果から、PMOがどのエリアにアプローチすれば良いかを判断します。

おそらく、ある程度プロジェクトマネジメントを取り入れて実行されている組織では、エリアごとにブレることはあまり無く、レベル3前後に散らばる結果かもしれません。まだまだオペレーション中心の組織で、プロジェクトマネジメントが浸透しておらずPMP®︎保持者などPMBOK®︎の知識をもつエキスパートが少ない組織であれば、レベル2前後かもしれません。

いずれにせよ、近年はプロジェクトの目標を組織戦略と整合させて、プロジェクトに費やす労力や費用に見合った(それ以上の)価値を得られるかどうかで、プロジェクトが成功したか否かを判断することが求めれれます。レベル2前後であれば、まずはレベル3に、レベル3前後であれば、それを如何にレベル4、5へと向上させていくかを検討し、PMOがどのエリアにフォーカスしてアプローチしていくかを決めることがひとつの手法として有用です。

プロセスやガバナンスの定義や標準化において、ツールやテンプレート、技法(テクニック)などを決めて推進しているかどうか?もPMOの役割として重要になってまいりますが、ここでは割愛させていただきます。

その他(PMOの成熟度に関する参考となる情報)

PMI(Project Management Institute)とプロフェッショナルサービスの大手ファームであるPwCが協力して作成した「PMO成熟度」があります。以下の5つの領域におけるPMOの成熟度指標(Global PMO Maturity Index)が提示されています。

  • ガバナンス Governance
  • 統合と整合 Integration and Alignment
  • プロセス Processes
  • 技術とデータ Technology and Data
  • 人材 People

切り口は異なりますが参考になります。以下リンクで公開されており、PDFがダウンロードできます。日本語訳版もありますのでチェックしてみてください。

Lessons from the Global Top Tier(世界の上位層から得た教訓):PMO Maturity(PMOの成熟度)

おわりに

PMOの組織成熟度からのアプローチ(プロジェクトレベル)をご紹介しました。皆さんのご参考になれば幸いです。冒頭にPMOの3つのレベルを記載しておりますが、近年では単にプロジェクトレベルだけではなく複数のプロジェクトを俯瞰した取り組みが必須となってきております。PMOは更に上位レベルでの役割を担いアプローチしていくことが求められ、実際に日本企業においてもポートフォリオレベル、プログラムレベルで活動をしているPMOが増えていると認識しております。

  • 「プログラムレベル」:複数のプロジェクトを取りまとめシナジーを創出。ベネフィットを実現し組織目標達成に貢献していくアプローチ(Program Management Office)
  • 「ポートフォリオレベル」:組織戦略との整合の観点で、プロジェクトの取捨選択や優先順位付を実施するアプローチ(Portfolio Management Office, Enterprise PMOなど)

これらの組織成熟度の観点からの「PMOのアプローチ」について、順次記事を投稿したいと思っておりますので、ご興味のある方はチェックしてください。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

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