PMOの国際標準と資格 P3O®︎について

英国AXELOSが発行している、PMOのグローバルベストプラクティスであるP3O®︎ Portfolio, Programme and Project Offices とその認定国際資格についてご紹介します。

英国のAXELOSは、プロジェクトマネジメントやITサービスマネジメント関連の国際標準(グローバルベストプラクティス)を発行しており、日本でもITサービスマネジメントの国際資格であるITILなどを取得されている方も多いと思います。このAXELOSがPMO関連のベストプラクティスとしてP3O®︎を発行しており、P3O®︎資格を認定しています。

近年、プロジェクトマネジメントが普及し、その成功・成果を得るためにプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)を設置、組織化している企業が日本でも増えております。またPMO業務を支援することや業務を請け負うコンサルタントベンダーも活躍されています。またPMOといっても、単にプロジェクトを支援する“プロジェクトマネジメントオフィス”だけではなく、近年では複数のプロジェクトを束ねて成果を上げるプログラムマネジメントを支援する“プログラムマネジメントオフィス”や、企業・組織レベルで複数のプロジェクトやプログラムを統括し、経営に貢献するレベルのポートフォリオマネジメントを支援する“エンタープライズPMO”、“全社PMO”なども存在します。

これらのPMOを組織化し実践するために、参考となるのがグローバルベストプラクティスである、AXELOSが発行しているP3O®:Portfolio, Programme and Project Offices です。PMOや関連する方には是非知っていただきたい内容です。また、私自身、P3O®︎資格(P3O®︎ Foundation)にチャレンジしましたので合わせてご紹介いたします。皆さんのご参考になれば幸いです。

補足:

Project Management Institute(PMI)は米国発祥ですが、AXELOSは英国発祥でAXELOSのベストプラクティスや国際資格は、欧州やオーストラリアなどで特に普及しています。(イギリス英語なので、プログラムの綴りはProgramではなく、Programmeです)

PMO関連の国際標準(ベストプラクティス)P3O®︎

AXELOSが発行している、P3O®:Portfolio, Programme and Project Officesは、2008年に発行されましたが、現在は2013年版(2013 Edition)が最新版になります。

Portfolio, Programme and Project Offices 2013 EDITION

概要

企業がポートフォリオ、プログラム、およびプロジェクトマネジメントを適応させるにあたって、それらをサポートする効果的なマネジメントオフィスのベストプラクティス・ガイダンスとして位置づけられています。組織内の変化を可能にするための意思決定と実行のサポート構造を示しており、ポートフォリオ オフィス、プログラムオフィス、プロジェクトオフィス、センター オブ エクセレンス(COE)などのP3O モデルを定義しています。これらの役割や事例なども記載されています。章立ては次のとおりです。

  • Chapter 1: Introduction
  • Chapter 2: Why have a P3O?
  • Chapter 3: Designing a P3O model
  • Chapter 4: How to implement or re-energize a P3O
  • Chapter 5: How to operate a P3O

その他、Appendixに豊富な情報があり、役割、ビジネスケースの例、ツール&テクニック、成熟度モデルなどが記載されています。

PMOに関わっておられる方には非常に参考になる内容だと思います。残念ながら日本語の翻訳版はなく英語ですが、特に難しい表現はなく読みやすいと思いますので、ご興味ある方は目を通されることをお薦めいたします。

入手方法(2024年3月9日現在)

  • Amazonで購入(Kindle)https://amzn.to/3PdIIig
  • P3O資格取得を考えておられる方は、試験の申し込み費用に電子ブック(読む)も含まれています。
  • また、資格試験申し込みサイトからオプションでペーパーバックも購入可能です。(PeopleCertで追加で購入可能:詳細は後述)

PMO関連の国際資格 P3O®

AXELOSが認定するPMO関連の国際資格:P3O®についてご紹介いたします。P3O®の認定資格には、次の2つがあります。この記事では、P3O® Foundation資格をご紹介します。

  • P3O® Foundation P3O®モデルなど、P3O®の内容を十分に理解していることを確認する認定資格
  • P3O® Practitioner P3O モデルの実践者を認定する資格。受験するにはP3O® Foundationの認定を受けている必要有

P3O® Foundation資格について

<対象者> ポートフォリオオフィス、プログラムオフィス、プロジェクトオフィスなどのメンバー、P3Oを理解したい人など

<試験内容>

  • 試験範囲:P3O 2013 edition内容から出題される
  • 複数選択式試験(4択)
  • 言語は英語(他にオランダ語、ドイツ語、ポーランド語、中国語がある。日本語はなし)
  • 75問(内、5問はトライアル問題で採点対象外。どの問題かは不明)
  • 試験時間は60分 (48秒/問 以内のペース)
  • 70問中35問(50%)以上の正答で合格
  • 試験中は本などの参照は不可(Closed book)

<受験形式>

  • PeopleCert社のオンラインプロクタリング試験(オンラインでテスト監督者が監視する試験)

<受験申込・費用> 以下記載の費用は2024年3月9日現在の価格です

  • PeopleCert社のWebサイトから申し込みをする
  • 試験費用は、¥65,545
  • 万が一不合格になった場合は、¥11,500で再受験可能
  • P3O®の電子本を読むことは試験費用に含まれるが、ペーパーバックは試験費用には含まれず、オプションで¥14,950で購入可能

詳細は、PeopleCertのホームページでご確認ください。

https://www.peoplecert.org/browse-certifications/project-programme-and-portfoliomanagement/P3O-7/p3o-foundation-798

P3O® Foundation 受験体験記(試験準備・対策、実試験の所感など)

これまで私はProject Management Institute(PMI)の国際標準を中心に学び、PMIの国際資格を取得してきましたが、AXELOSの国際標準については、ITサービスマネジメントのITILの概要(ITIL Foundationの資格は取得済) だけで、AXELOSのプロジェクトマネジメント系(PRINCE2など)については、これまで深掘りしていませんでした。

P3O®は、ポートフォリオ、プログラム、プロジェクトの全体をカバーする内容より、私の専門分野でもありますので、P3O®を読み始めました。どうせなら資格にもチャレンジをと思い、P3O® Foundationを受験しましたので、その内容を共有させていただきます。

資格取得までのスケジュール

準備から合格するまで、約3ヶ月ほどでした。

実際のスケジュール

試験準備

試験準備としては、P3O®を読み込むことのみでした。ただ、英語で200ページ以上ありますので、一通り読むのにそれなりに時間がかかり、主に週末を中心に2ヶ月ほどかけて読みました(2023年12月~2024年1月頃)

試験対策

試験対策としては、UdemyのP3O® Foundationの問題を解くことを、約1ヶ月の間(2024年2月〜3月初旬に)実施しました。実際に解いた問題と、その際の正答率などを以下にご紹介します。

(Udemyはセールを実施していることが多く、そのタイミングで購入することがおすすめです)
https://www.udemy.com/course/pass-p3o-foundation-from-first-attempt-100-6-mock-exams/?couponCode=ST12MT030524

https://www.udemy.com/course/p3o-portfolio-programme-and-project-office-passing-exam/?couponCode=ST12MT030524

実際の試験は、50%以上の正答率で合格ですが、これらの問題では70%以上正答することを目標としました。2回目には70%以上をクリアできましたので、本番の試験にのぞみました。

実試験

オンラインプロクタリング試験で受験。PeopleCertのオンラインテストの手順をもとに、事前準備したうえで受験しました。

  • 試験日時: PeopleCertのオンラインプロクタリング試験は24時間365日可能ですが、これはプロクター(試験監督者)言語を英語とした場合で、日本語の場合は土日祝日はなく平日の時間帯のみとなります。このプロクター言語は試験申し込み時に選択します。(実試験は英語です)
  • プロクター(試験監督者): 日本語を選択したので、日本人の方で、全くストレスなく順調に準備・チェック(本人確認IDのチェック、試験場所環境のチェック等)は終了しました。
  • 受験した際のPC等: Mac Book Air (M1) 13インチで、内蔵カメラ、内蔵マイクとマウスのみ
  • 試験場所: 駅のショッピングビル内の個室ブース(写真参照)

駅のショッピングビルに設置してある、個室ブース(CocoDesk)を予約して利用しましました。https://www.fujifilm.com/fb/solution/menu/cocodesk テスト前にプロクターからカメラ越しに扉やデスクなどのチェックがありましたが、このブース内で特に問題ありませんでした。実試験開始時間より1時間ほど前に入り、事前準備を実施したうえで試験にのぞみました。

実試験の所感と結果

実試験の所感としては、ほぼUdemyで実施した問題と同じような内容が7割程度あった感覚です。

  • 問題文は1行ほどの短いもので、P3O®内容を把握していれば解ける印象
  • 試験時間60分のところ、約40分で75問を解き終わり、テスト終了ボタンを押す
  • アンケート終了後、即結果が出て、65.7%の正答率でPass(合格)。7割以上は出来たという感触でしたが、結構間違えていたようです(汗…)
  • 試験実施日から2営業日後に、PeopleCertのホームページから認定証書の参照(ダウンロード)が可能となりました。またテスト結果の分野別の正答率が記載されたレポートも参照可能でした(ここでは割愛いたします)
実際の認定証書

その他(参考情報)

  • ポートフォリオマネジメントやプログラムマネジメントについて、またその組織や人材育成などを、昨年2023年9月に出版した書籍に記載しております。今回ご紹介したP3O®︎も含め、知識を深めたいという方は、是非お読みいただければ幸いです。
  • AXELOS社とは:https://www.axelos.com/ 英国政府とアウトソーシング大手 Capita との合弁事業として 2014 年に設立。2021 年 7 月に PeopleCertの傘下となった。ITサービスマネジメント、プログラムマネジメントなどのグローバルなベストプラクティス・ガイダンスを発行しており、世界200ヵ国以上で参照され活用されている。また関連する国際資格(ITIL®、PRINCE2®、MSP®、MOP®、P3O®など)の認定を実施している団体
  • PeopleCert社とは: https://peoplecert.jp/ 試験および認定サービスの提供における世界的リーダーであり、200ヵ国以上で数百万件の試験を提供している団体

以上、長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。

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