〜 現代ビジネスにおいて求められるリーダー人材・キャリア形成は?〜
目次
はじめに
近年、ビジネス環境が急速に変化し、複雑さや不確実性が高い状況において、既存を踏襲したこれまでと変わらないことを継続していては、企業や組織の成長はありません。むしろ退化していきます。このような状況において、ビジネスを継続的に発展させていくために最も必要とされているのが、変革を推進していく力であり、プロジェクトマネジメント(PM)の能力を兼ね備えた人材です。PMのスキルは、単なる業務遂行の手段にとどまらず、現代ビジネスにおいて、キャリアアップの強力な軸足となっていきます。本記事では、PMスキルを活かしたキャリア形成の重要性や、具体的な成長への道筋についてご紹介します。
プロジェクトマネジメントとは何か
釈迦に説法で言わずと知れた内容ですが、プロジェクトマネジメントとは、目標達成のために必要な作業を計画し、組織し、実行し、マネジメントする一連のプロセスであり、計画策定、リスク管理、コミュニケーション、リーダーシップ、進捗管理などが含まれます。これらの内容はグローバルスタンダードであるPMBOK®︎に記載があり、プロジェクトマネジメントを実践するスキルは業界や職種を問わず、幅広く応用が可能です。
幅広い業界でプロジェクトマネジメントが求められる
日本においては、IT分野での活用が注目されがちですが、実際には多くの業界でプロジェクトマネジメントは必要とされており、実践されています。以下に代表的な例を挙げます。
- 建設業界:建物やインフラの建設プロジェクトでは、設計から施工、完成まで多くの工程と関係者が関わります。安全管理や品質管理、スケジュール調整が不可欠です。
- 製造業:新製品の開発プロジェクトでは、研究、試作、生産ラインの構築、マーケティングまで一連のプロセスを管理します。
- イベント運営:スポーツ大会やコンサートなどのイベントでは、会場準備、スタッフ配置、進行管理、リスク対応など細かな計画が求められます。
- 研究開発:科学実験や新薬開発などもプロジェクトの一種。予算管理や成果の評価、進捗の報告が重要です。
- 公共事業:都市計画や交通インフラ整備など、社会に影響を与える大規模プロジェクトでもマネジメント能力が問われます。
その他にも、医薬、医療、金融、サービス業、エネルギー、教育など、多様な業界でプロジェクトマネジメントは重要な役割を果たしています。新規事業立ち上げ、M&A、新商品開発、設備投資、業務改善、イベント運営など、業界ごとにプロジェクトの内容は異なりますが、PMスキルはどの分野でも普遍的に求められています。
組織をリードするPM人材の価値
近年、組織には日常的なオペレーションの精度だけでなく、変革やイノベーションの推進が強く求められるようになっています。こうした時代の流れの中で、プロジェクトマネジメントの能力を持った人材こそが、企業・組織の未来を切り開くリーダーとして中心的な役割を担う存在であることは間違いありません。変革プロジェクトや新規事業創出など、非定型で複雑な課題を推進できるPMスキルは、組織の成長に不可欠です。
PMスキルがキャリア形成に有効な理由
企業・組織において、プロジェクトマネジメントの実践に威力を発揮する主なスキルには以下のようなものがあります。
- 組織横断的な調整力(一つの部門内だけではなく、組織の壁を超えて物事を進める力)
- 変化への柔軟な対応力(変化を受け入れて、その変化を成長の機会と捉えて対応する力)
- リーダーシップ、意思決定力
- 目標(成果や価値)を明確にし、達成するための意欲(コミットメント)
これらのプロジェクトを成功に導くスキル(PMスキル)は、組織内外で高く評価される内容で、まさに現代ビジネスのリーダーに相応しいものであることは言うまでもありません。
最近、これらのPMスキルを持つリーダーと対比されて、よく話題に上がるのが、旧態依然の階層型組織オペレーションに基づく考え方のリーダーです。
主なスキル | PMスキルを兼ね備えた リーダー | 旧態依然の組織の考え方の リーダー |
組織横断的な調整力 | ◯ 積極的に対応 | △ 自身の部門が中心 |
変化への対応力 | ◯ 変化を受け入れて対応 | △ 変化を好まず保守的 |
リーダーシップ・意思決定力 | ◯ 部門を超えてリード 迅速な判断を心がける | △ 部門内のリード、判断が中心 他部門への関与はあまりない |
目標達成意欲 | ◯ 部署の目標に加え、 プロジェクト目標の達成に コミットする | △ 部署の目標をコミットする |
◯:これからの時代に求められるもの △:従来の旧態依然の組織の考え方で改善が必要
この表をご覧になって、皆さんが所属されている企業・組織、コンサルの方であれば支援先の企業・組織に当てはめてみていただければと思います。成長されている企業・組織の経営層やリーダーは左側の考え方で実践されているのではないでしょうか。
キャリア形成のためのアクション
こらからの時代のリーダーにPMスキルが求められることを記載しましたが、ではこれらのPMスキルを持ってキャリア形成に繋げていくためには、どのような考え方を持ちアクションを実施していけば良いか?日々の活動や自己啓発において、あくまでも一般的な内容ですが、少しご紹介いたします。
- プロジェクトマネジメントを実践する場合に、ビジネスの意識を強く持つ。
- 経営戦略や経営計画を把握した上で、そのプロジェクトの目標が経営戦略と整合しているか、どのように経営に貢献できるかを常に意識する。ファイナンス知識を習得する。
- ビジネスにおける変化を捉えて、その変化をネガティブではなく、変革の良い機会だとポジティブに捉えてチームを牽引する
- 何か変革を起こす際に、部門だけで閉じるものは少なく、他部門と一緒になって実施していくことが多い状況で、積極的に他部門へ働きかけてリーダーシップを発揮する
- PM資格を取得することで専門性に磨きをかける。根拠や裏付けを明確にすることによって、自信を持って自身の発言や行動をするように心がける(他者への影響力向上につながる)。私がお勧めするのは、グローバルでも通用し、幅広い業種を対象としているPMIの国際資格(*1) です。
- 異業種・異部門での経験を積む。様々な分野でPMを経験することで、応用力や視野が広がります。(社内の異動や、転職のチャレンジなど)
(*1)お勧めするPMI(Project Management Institute)の国際資格
- PMP®︎(Project Management Professional)
- PgMP®︎(Program Management Professional)
- PfMP®︎(Portfolio Management Professional)
実は、私自身も、これまでに以下のような業界(業種)で、プロジェクトマネジメントを軸足にして経験を積み、国際資格の取得を含め、専門性を高めてきました。
- 石油精製、石油化学プラント制御関連
- ITシステム開発関連
- 大規模病院 医療DX関連
- 既存ビジネス改革 (グローバル)
- 新規ビジネス立ち上げ
- M&A関連
- その他
PMスキルを活かしたキャリア形成の例
あくまでも一例ですが、次のようなキャリア形成があります。
- プロジェクトマネージャー(PMP保有)からプログラムマネージャー(PgMP保有)、ポートフォリオマネージャー(PfMP保有)、経営層へ
- IT、建設、製造、医療、金融、サービス、エネルギーなど様々な業界でのPMスペシャリスト
- 独立して起業する(フリーランスPM、コンサルタント、会社設立など)
PMスキルは汎用性が高く、組織内の昇進だけでなく、キャリアチェンジや独立にも活かすことができます。
ちなみに上記のプロジェクトマネジャーから経営層へのキャリア形成については、別の記事でご紹介しておりますので、以下のリンク先をご参照ください。
まとめ
プロジェクトマネジメントは、企業・組織の成長に貢献することはもちろん、自己成長やキャリアアップの強力な武器になると思います。計画力・調整力・リーダーシップを磨き、積極的に新しい挑戦を続けること、プロジェクトマネジメントも日々進化しておりますので、海外の情報を積極的に取得し専門性を高め、深掘りしていくことで、より豊かで多様なキャリアを築くことができると感じています。
以上、長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。少しでもご参考にしていただけるとこがあれば幸いです。