本記事は、2023年に投稿した記事「プロジェクトマネージャーのサラリー (PMIのサーベイ結果)」の内容をアップデートして再投稿したものです。
今や、どの企業においても、通常のオペレーションに加え、多くのプロジェクトを立ち上げて実行している状況ですが、プロジェクトを担当する人材がますます必要となっており、その価値が年々高まっているといわれております。
この記事では、プロジェクト人材のキャリアアップの例と、そのキャリアにおけるサラリーの状況について、PMI(Project Management Institute)が実施したサラリーに関するサーベイ結果を含めご紹介いたします。
目次
プロジェクト人材のキャリアアップ
海外ではプロジェクトマネージャーだけではなく、その上位のプログラムマネージャーやポートフォリオマネージャーなどの役割が明確になっております。その概念をまずご紹介します。
以下の図は、拙著「プロジェクト・ポートフォリオマネジメントの教科書」の第6章に掲載したもので、プロジェクトマネージャー等のキャリア形成の例になります。

海外では、この図のように、プロジェクトマネージャー、その上位に位置付けられるプログラムマネージャーやポートフォリオマネージャーが存在し、それぞれの役割を担っております。経験を積んだプロジェクトマネージャーは、プログラムマネージャー、ポートフォリオマネージャーへのキャリアパスがあります。また近年では、Chief Project Officer(CPO)という肩書きを持ったエグゼクティブも存在します。
また、それぞれのレベルの国際資格として、PMI(Project Management Institute)認定の、PMP®︎(Project Management Professional), PgMP®︎(Program Management Professional), PfMP®︎(Portfolio Management Professional)があり、こららはPMIのFlagship Certificationsとして位置付けられています。
それぞれの役割について
プロジェクトマネージャー(PM)
近年、企業・組織では既存事業の維持と発展、新規事業(成長分野)の創出へ向け、通常のオペレーションに加え、様々な施策を実行し多くのプロジェクトを立ち上げて実行している状況です。このような状況の中、これらのプロジェクトをリードし成功に導く役割がプロジェクトマネージャーです。PM人材は貴重で、その価値がますます高まっております。これは日本に限った話ではなくグローバルレベルでも同様です。
プログラムマネージャー(PgM)
また、プロジェクトも大規模・複雑化し不確実性が高くなる傾向にあり、ひとつのプロジェクトでは企業・組織のベネフィットに結び付き難いなどがあり、複数のプロジェクトを束ねてシナジーを創出しベネフィットを創出するプログラムマネジメントが注目され、特に欧米をはじめとする海外では普及しております。プログラムをリードするのはプログラムマネージャーであり、その役割に注目が集まっております。
ポートフォリオマネージャー(PfM)
多くのプロジェクトやプログラムを実行している状況では、これらの成否が企業・組織の成長に大きく影響を及ぼす状況より、企業・組織の戦略と整合した正しいプロジェクトやプログラムを選定、優先順位づけを実施するプロジェクトのポートフォリオマネジメントが不可欠となっております。このプロジェクト・ポートフォリオをマネジメントするポートフォリオマネージャーが活躍する時代となっております。
Chief Project Officer(CPO)
プロジェクトやプログラムから得られる成果・ベネフィット、ポートフォリオの価値創出に責任を持ち、経営計画の達成をコミットする立場の役員として、Chief Project Officer(CPO)を設ける企業が海外で増えております。
2025年1月に開催されたセミナー「Rising to the top: Becoming a Chief Project Officer Summit 2025」(PMO Advisory主催)に参加しましたが、そのセミナーの中で、SNS等の調査結果の話があり、約2,700名のCPOの肩書きを持つ人がヒットしたとのことです。また、最近発刊された洋書にも、CPOのタイトルが付いた書籍も見かけます。(これらの内容は機会があれば別途ご紹介したいと思います)
役割ごとのサラリーの状況(PMIのサーベイ結果より)
サラリーの状況
Project Management Institute (PMI)がプロジェクトマネージャーなどのサラリーに関するサーベイを実施しており、その結果は「Earning Power: Project Management Salary Survey – Thirteenth Edition」https://www.pmi.org/learning/careers/project-management-salary-survey に掲載されています。PMI会員の方はPMIのホームページにログイン後、詳細の結果を確認できます。またPMI会員以外の方もサマリー(PDF)がダウンロードできますので、ご興味のある方は是非ご確認ください。
世界21ヵ国の2万人以上のプロジェクトマネジメント実践者(PMなど)が対象となっており、日本人も866名が含まれています。主要国の役割ごとのサラリー額は次の表の通りです。

上記額は給与の中央値:各国との通常の為替レートを使用して米ドルに換算した額 (サーベイ実施時の2023年4月時点)で、日本の場合は、136.289JPY/USD で換算した米ドル額(USD)です。
また、Project Managerの役割区分が3つに分かれていますが、各役割の概要は以下の通りです。
- Project Manager Ⅲ:大規模で優先度の高いプロジェクトを担当(かなりのリソースが必要で高レベルの機能統合プロジェクトなど)
- Project Manager Ⅱ:複数のプロジェクトまたは一つの大規模プロジェクトを担当
- Project Manager Ⅰ:小規模プロジェクトまたは大規模プロジェクトの一部フェーズを担当
サーベイ結果に対する所感
USは日本の額の1.5倍以上あり、中東やアジアのUAE, Australia, Singaporeも、日本を上回っているという結果です。日本の場合は、ポートフォリオマネージャーやプログラムマネージャーの役割が確立できていないと認識しており、このサラリーの調査結果でも、Project Manager Ⅲ, Program Manager, Portfolio Manager, Directorの額は、ほぼ同額となっており、明確に分類ができていないことが結果に現れています。
あくまでも個人的な見解ですが、実際には日本においても、Portfolio ManagerやProgram Managerと同じような役割をこなしている方も多く存在していると感じています。海外と同様に、ポートフォリオマネジメントやプログラムマネジメントが普及し、日本においても近い将来これらの役割が明確になり、その価値が高まっていくことを願っております。
その他参考
拙著「プロジェクト・ポートフォリオマネジメントの教科書」では、ポートフォリオマネジメントについて、世界標準の概要やプロジェクト型組織、人材育成など、ポートフォリオマネージャーやプログラムマネージャーの役割などを解説しております。またプログラムマネジメントの概要や事例もご紹介しておりますので、是非ご参考にしていただければ幸いです。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。