“Project Management Offices: A Practice Guide” Quick Review
2025年2月にPMI(Project Management Institute)より PMOのプラクティスガイド”Project Management Offices: A Practice Guide”(以下「PMO実務ガイド」と記載)が発行されました。その概要をクイックレビューとしてご紹介いたします。PMO関連に携わっておられる方など、ご参考にしていただければ幸いです。
記載の内容は、PMIが広報している内容や実際の本文に記載されている内容をもとに、あくまでも個人の見解としてまとめた概要になります。
目次
背景
PMIはこれまでにPMBOK®︎(Project Management Body Of Knowledge)をはじめとするグローバル標準を数多く発行しておりますが、PMOに関するものはありませんでした。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、PMIは2023年の10月に世界最大級のPMOの団体であるPMOGA(PMO Global Alliance)を買収したことを発表し、現在PMOGAはPMI傘下のPMOコミュニティとして活動を継続しています。そのPMOGAが発行していた “PMO Value Ring™”と呼ばれるスタンダードが有り、それをもとにエンハンスしPMIが発行したものが「PMO実務ガイド」になります。
入手方法
2025年2月より、PMI会員向けに英語版(PDF)が無料で公開されています。PMIのホームページにログインし英語版のPDFがダウンロード可能です。(ただし、印字やテキストのコピーは不可)https://www.pmi.org/standards/pmo
ペーパーバックについては現時点(2025年3月)では未だ発行されておらず、2025年5月23日に発刊予定となっています。電子書籍(Kindle)は2025年3月31日に発行となっております。https://amzn.to/4itH7BK
(アメリカのAmazon.comでは、ペーパーバックの予約オーダーを受付けおり、私は早速注文しておきました)
日本語版については、現時点で発行の有無、時期などは未定です。
外観
外観は、以下の写真右側ですが、左側がプロジェクトマネジメントのPMBOK®︎と合わせて併用する「Process Groups: A Practice Guide」(以下「プロセス実務ガイド」と記載、2022年11月発刊)で、これとデザインや色のトーンは同じで統一されています。
ページ数ですが、左の「プロセス実務ガイド」が369ページ、「PMO実務ガイド」が340ページとほぼ同じで(未だペーパーバックが手元にありませんが)、本の厚さも同じ程度になると思います。
左側のプロジェクトマネジメントに関する”Process Groups: A Practice Guide”は、PMI日本支部が監訳した日本語版が発行されています。正式名称は「プロセス群:実務ガイド」になります。今回ご紹介している”Project Management Offices: A Practice Guide”も日本語版が発刊されることを期待しています。

「PMO実務ガイド」概要(クイックレビュー)
この「PMO実務ガイド」は、世界中のPMOリーダーにより開発され、PMOの価値を高める革新的な内容が記載されているという触れ込みです。
構成
構成は以下のとおりです。
- Introduction
- How to read This Guide
- Part1 Building a New PMO Mindset
- Part2 The PMO Value Ring™ Framework
- Part3 Exploring the Value-Generating PMO Flywheel
- Part4 Appendices
- Appendix X1. Contributors and Reviewers
- Appendix X2. PMO Customer Expectation Assessment
- Appendix X3. PMO Service Maturity Assessment
- Appendix X4. Critical Competency Profiles for PMO Service Delivery
私の方で目に留まった点を中心に、かいつまんで記載されている内容をご紹介いたします。
Customer-Centric, Value-Driven Approach to PMOs(顧客中心・価値重視)
このガイドでは、PMOの顧客中心・価値重視のアプローチとして、顧客のニーズと価値の創出に重点を置いて進化した 「PMO バリューリング」 フレームワークを紹介しています。「PMOリーダーに変革を導くための実用的な戦略を提供する」とうたっています。
A Paradigm Shift for PMOs(PMOのパラダイムシフト)
新しいフレームワークにより、PMO は戦略的な推進者としての地位を確立できるようになり、あらゆる組織や成長段階の変化するニーズや優先事項に適応できる柔軟性を提供するという内容です。
Core Elements of the PMO Framework(PMOフレームワークの中核要素)
PMOフレームワークの中核となる要素として、以下の5つが記載されています。
- PMO Customers(PMOの顧客)〜 PMO戦略策定のための中核的な参考資料
- Organizational Baseline Elements(組織のベースライン要素)〜 PMO を戦略、文化、構造に合わせて調整
- PMO Structural Components(PMO構造のコンポーネント)〜 PMO の任務、戦略、ガバナンスを定義
- PMO Customer Experiences Cycle(PMO顧客体験サイクル)〜 変化する顧客ニーズに適応する必須のプロセス
- Value-Generating PMO Flywheel(価値を生み出すPMOフライホイール)〜 継続的な価値創造を推進する実践的なステップ
The PMO Customer Experience Cycle(PMO顧客体験サイクル)
PMO が関連性と価値重視の姿勢を維持できるようにするための 「5 段階のループ」があります。
- Exploration stage(探索)〜 PMOは顧客のニーズを発見し、将来のステージの基盤を築く
- Design Stage(設計)〜 PMOは、探索ステージの洞察に基づいてカスタマイズされたソリューションを設計する
- Deployment Stage(展開)〜 PMOはソリューションを実行し、スムーズなサービス提供を確実にする
- Enhancing Stage(強化)〜 フィードバックと調整を通じて継続的な改善に重点を置く
- Realization Stage(実現)〜 成果を測定し、PMOの価値を実証する
Introducing the Value-Generating Flywheel(価値を創出するフライホイール)
PMO顧客体験サイクルを通じて継続的な改善を促進する、動的な 10ステップのプロセスが記載されています。
フライホール(Flywheel)は、日本語では「弾み車(勢車)」ですが、ビジネスの世界でも「フライホイール効果」や「フライホイールモデル」といわれております。小さな成功の積み上げ・蓄積が、時間の経過とともに大きな力となり、最終的に持続的なビジネス成長が実現されることを意味し使われます。
反復するたびにフライホイールが勢いを増し、価値を高め、常に変化するビジネスのニーズに適応していくための「動的な10のプロセス」があり、前述の5段階のループごとにプロセスが定義されています。
Exploration(探索)
1) Awareness Building (意識啓発)
2) Needs Assessment (ニーズ評価)
Design(設計)
3) Value Proposition (提供する価値)
4) Service Development (サービス開発)
Deployment(展開)
5) Service Onboarding (サービス利用・定着)
6) Service Operation (サービス運用)
Enhancement(強化)
7) Service Monitoring (サービス監視・状況確認)
8) Service Improvement (サービス改善)
Realization(実現)
9) Value Delivery (価値の提供)
10) Value Recognition (価値認識)
PMO Service Maturity Assessment(PMOサービスの組織成熟度)
Appendix X3には、PMO Service Maturity Assessment(PMOサービスの組織成熟度評価)が記載されています。次の3つのサービスの観点で、合計26の項目ごとに成熟度レベル(レベル1〜5)が定義されています。
- Strategic Service(戦略)〜 7つの項目
- Tactical Service(戦術)〜 5つの項目
- Operational Service(運用・オペレーション)〜 14項目
その他(PMIが認定するPMOの国際資格)
この「PMO実務ガイド」が発行されたタイミングに合わせて、PMIが新たなPMOの国際資格の認定をスタートしています。PMI® Project Management Office Certified Professional (PMI-PMOCP)™という資格になります。資格試験の参照ドキュメントは「PMO実務ガイド」と「PMBOK®︎」です。グローバルレベルのPMOプロフェッショナルとして認定されますので、ご興味のある方は是非チャレンジをされてはいかがでしょうか。
おわりに
実際のビジネスにおいては、企業・組織の状況、実行している施策、プロジェクト・ポートフォリオマネジメント、プログラムマネジメント、プロジェクトマネジメントのレベル等により、PMOの果たす役割は変わってきます。つまり戦略レベル、戦術レベル、運用・オペレーションレベルのPMOなのか等です。
この「PMO実務ガイド」は、今実施しているPMOの内容や立ち位置・役割を確認するだけでなく、今後の改善を検討する際に有用となる情報が記載されています。PMOに携わっている方はもちろんのこと、経営層やPMOサービスを外部に委託されている方などにとっても参考になる内容が盛り込まれていると感じました。この記事をご覧になり深く知りたいという方は是非本文(PDFや書籍)を入手されることをお勧めいたします。
以上、簡単なレビューですが、皆さんのご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
PMOの組織成熟度によるアプローチについては、以下の記事にも記載しております。ご興味のある方は合わせてお読みください。