複雑なプロジェクトとは?

〜 プロジェクトの複雑性についての考察 〜

近年、企業・組織において、複雑なプロジェクトが増加していると良くいわれます。私もそのように感じておりますし実際のビジネスにおいて複雑なプロジェクトが多く存在します。では何が複雑なのでしょうか?複雑になる要因は多々あると思いますが、この記事ではそのプロジェクトの複雑性について少し深掘りしてみました。

プロジェクトの複雑性を把握することにより、プロジェクトの実施判断をすることや、プロジェクトのガバナンスをどう構築するかに役立てることができます。

プロジェクトが複雑となる8つの要因

プロジェクトが複雑化する要因は多岐にわたり、企業・組織における状況によって様々だと思います。一般化して記載することは難しいですが、ある程度共通した要因があります。

以下は、私の方でグローバルベストプラクティスであるP3O®︎ (Portfolio, Programme and Project Offices)の ”Complexity Modelling” に基づき、整理・集約・追加し8つに分類したものです。

  • 顧客の状況による影響
    • プロジェクト(変化等)に対する受け入れ度合い(積極的、保守的など)
    • 顧客の体制(協力的なキーマンの有無、意思決定の迅速さなど)
  • プロジェクトがもたらす影響(範囲)
    • プロジェクトリスク(考えらえるリスク)が露出した場合の組織への影響度合いなど
    • プロジェクトが組織内部(オペレーション、プロセス等)にもたらす影響の度合い。たとえば部門内なのか、部門の壁を越えた広い範囲へ影響するプロジェクトなのかなど
    • プロジェクトが外部(サプライヤー、パートナー、その他ステークホルダー)にもたらす影響度合い
  • ステークホルダーの数
    • 内部、外部のステークホルダーの数
    • 外部のサービスプロバイダや関連ベンダー(調達先)など、プロジェクトを進めるにあたっての外部の協力会社の数など
  • 知識・情報レベル
    • 組織内部に関連する技術知識がどの程度あるのか、また習得可能か、知識を容易に利用可能な状況にあるか(ナレッジベースの有無)など
    • ビジネスプロセスの知識がどの程度あるのか、またその情報はドキュメント化され保存されており容易に参照可能かなど
  • ITプラットフォームの数
    • インフラの状況、ミドルウエア、OS、システムなど、ITシステムのプラットフォームの数など
    • 組織において統合必要、またはインタフェイスが必要な内部システムの数や、ハンドリングするデータの種類がどの程度あるかなど
  • プロジェクトのリソース
    • プロジェクトライフサイクルに必要となる全てのコスト(工数、発生費用、教育費、旅費、その他)の規模・額
    • プロジェクトに割り当てる人、モノなどのリソースの状況(能力、容量等)
  • プロジェクトスケジュール
    • プロジェクト完了(オペレーションへの移行)までのスケジュール
  • ポートフォリオ、プログラムとの関連
    • ポートフォリオやプログラムのコンポーネントとして位置付けられるプロジェクトかどうか、またその場合はプロジェクトの成果がポートフォリオやプログラムへどの程度影響するか
    • 同時並行的にプロジェクトが進行している場合など、実施しているプロジェクトの進捗(成果物含む)が他のプロジェクトにどう影響するか、影響するプロジェクトの数・度合いなど

プロジェクトの複雑性をスコアリングする

プロジェクトの複雑性を定量的に評価する方法として、ご紹介した8つの要因をもとにスコア化する方法をご紹介いたします。あくまでも簡易的な例になりますが、ご参考にしてください。

上記の表のように、複雑性の要因ごとに評価いたします。評価レベル(A、B、C、D)やその点数の付け方は、企業・組織の状況に応じてテーラリングし決めていくことになると思います。また8つの要因についても実際には企業・組織に応じて細分化して評価(ランク・点数付け)していくことが必要になると考えます。

プロジェクトの複雑性を把握し、それをどう活かすか

プロジェクト・ポートフォリオマネジメントの観点

企業組織におけるプロジェクトの数は増加の一途をたどり、限られたリソースをどう有効に活用するかは大きな課題ですが、そのプロジェクトの複雑性をあらかじめ評価することは、プロジェクトの実施可否の判断に役立ちますし、無駄な投資を抑制することに繋がります。プロジェクトの取捨選択・優先順位付けを判断する「プロジェクト・ポートフォリオマネジメント」の手法として活用できます。

以下は、プロジェクトの複雑性とプロジェクトが創出する価値をもとに、プロジェクトの取捨選択や優先順位付を実施するアプローチの例になります。

プロジェクトのガバナンスの観点

プロジェクトの複雑性に基づき、プロジェクトのガバナンスやコミュニケーションプランを検討いたします。プロジェクトマネジャーのアサインや、プロジェクトレビューや報告についてのレベルを決めることも必要になります。以下はその例になります。

以上、プロジェクトの複雑性について、その要因や複雑性を把握した上でのアクション等についてご紹介しました。ここに記載したことを実際のビジネスに落とし込むにはより詳細な観点で検討することが必要だと思いますが、少しでも皆さんのご参考になれば幸いです。(PMO関連のメソッド構築においてご参考にしてください)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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