〜 企業・組織の戦略実行に貢献し価値創出にフォーカスするPMO 〜
PMOという言葉は日本でもかなり浸透し、PMOとして活躍されている方や関わっておられる方も多いと思います。ではEPMOについてはどうでしょうか?聞いたことはあるが実際にどのような役割なのか把握していないという方も多いと思います。先日も「EPMOという言葉を最近よく耳にするが、実際には何をするのか教えてほしい」というご質問をいただきました。そこでこの記事ではEPMOについて、その必要性や役割などについてご紹介いたします。
目次
EPMOとは?
PMOは、Enterprise Project Management Officeの略で、プロジェクトマネジメントの枠を超えて企業・組織全体のプロジェクトを管理し、企業・組織の戦略とプロジェクトとを効果的に結びつける役割を果たします。従来のプロジェクトを支援するPMO(Project Management Office)はプロジェクトの成果創出へ向け注力しますが、EPMOは経営に近い企業の最上位に位置し、プロジェクト全体を俯瞰しプロジェクトが企業・組織の価値を創出することにフォーカスし取組みます。つまり、企業・組織の戦略目標の達成に貢献する機能(部門)がEPMOになります。全社PMOやポートフォリオマネジメントオフィスと呼ばれることもあります。
EPMOが必要となっている背景
近年、企業・組織の取り巻く外部環境や内部環境は、変化が絶えず発生している状況です。新型の感染症、半導体不況、地政学的リスク、円安不況、物価高騰、USの関税、少子高齢化、人口減少など、これらの変化は企業の経営に大きな影響を及ぼしています。
これらの変化に対応すべく、多くの企業では経営戦略を策定し、既存事業の維持・発展はもとより新規事業(成長分野)への取組みなど、様々な施策を実行している状況です。つまり多くのプロジェクトを立ち上げて実行しており、プロジェクトの成否が今後のビジネスを左右するといっても過言ではない状況になっております。
ただ、リソースには限りがあることより、企業・組織の戦略に沿った正しいプロジェクトを見極めて実行し確実に成果を得ることが求められます。プロジェクトの見極めは、プロジェクト・ポートフォリオマネジメントを取り入れてプロジェクトの取捨選択、優先順位付などを実施することになりますが、これらを実行支援する機能(部門)がまさにEPMOです。プロジェクトの数が増加の一途を辿り、EPMOの必要性がますます高まっている状況だといえます。
海外では、実際にEPMOを設ける企業が増加
プロジェクトの実行支援を行うPMOは日本においても増加しており、PMOの機能を設けている日本企業も多いと思います。では、EPMOについてはどうでしょうか?日本国内ではあまり浸透していないかもしれませんが、グローバルレベルではEPMOを設ける企業が増加しています。EPMOの位置付けは、経営に近いレベルに位置付けられます。図で表すと以下のようなイメージになります。(画像をクリックすると拡大します)

グローバルレベルでEPMOが増加していることは、以下のPMIの”The Evolution of PMOs“という記事にも記載があります。詳細はこちらのリンクをご参照ください。https://www.pmi.org/learning/thought-leadership/value-delivery

2021年にPMIとPwCが実施した調査結果が紹介されていますが、PMOが従来のプロジェクトの実行支援から価値創出にフォーカスするレベルに進化していること、PMOのデザインや活動が組織の成果に影響を与えておりその名称も変わってきている(上図)とあります。詳細は以下のリンクをご参照ください。
EPMOの主な4つの役割について
EPMOの概要や、EPMOを設けている企業がグローバルレベルで増加していることをご紹介しましたが、ではEPMOはどのような役割を担うのでしょうか。
EPMOの主な役割として、以下の4つがあると言われています。これらは、プロジェクト・ポートフォリオマネジメントの体系的なアプローチがベースとなっています。
戦略的役割
EPMOは、プロジェクトやプログラムが企業・組織の戦略的目標に沿っていることを確かなものとします。プロジェクトの選定や優先順位付を実施することにより、戦略の実現可能性が高まり、企業の経営戦略目標の達成に貢献します。
リソースの最適化(配分)
EPMOはプロジェクトやプログラム全体を俯瞰し、リソースの最適配分を行います。これにより、投資効果を最大化し、リスクを最小化します。
変革推進
変革(変化)を推進し、変化に適用させるためにプロジェクトやプログラムを積極的に支援します。プロジェクトやプログラムの遂行においては、標準化されたプロセスや手法を導入するなどガバナンスを確立します。また、組織内外のステークホルダーとの連携を促進し情報の透明性を確保します。これにより、プロジェクト・プログラムの成功率を高めます。
価値実現
EPMOは、上記の変革(変化)を推進し、プロジェクトやプログラムの成果、ベネフィットを迅速に実現することを目指し、戦略目標達成に貢献します。
EPMOの11のケーパビリティと期待される効果
では、もう少し具体的に上述の4つの役割に関するEPMOのケーパビリティ、および期待される効果についてご紹介します。以下の表に、EPMOの11のケーパビリティ・役割と、期待される効果・成果(Outcomes)を記載しましたのでご覧ください。(表をクリックすると拡大します)

この表は、英国AXELOSから発行されているグローバルベストプラクティスのP3O®︎(Portfolio, Programme and Project Offices)に記載がある内容をもとに、私の方で要約・追記しまとめたものです。
イメージを掴んでいただけましたでしょうか。
その他(関連書籍、記事など)
EPMOのアプローチは、グローバルスタンダードであるプロジェクト・ポートフォリオマネジメントをベースとしたものになります。その内容を「プロジェクト・ポートフォリオマネジメントの教科書」で解説しております。是非合わせてお読みいただけると幸いです。
また、以下の記事に、PMO(EPMOを含む)の種類、役割、PMOのアプリーチ等を掲載しております。こちらもご参考にしてください。
- PMOの種類・役割について https://p3moffice.com/2025/01/pmodefinition-from-globalstandards/
- 組織成熟度によるPMOのアプローチ(ポートフォリオ、プログラムレベル)https://p3moffice.com/2025/03/pmo-approach-maturity-portfolio-program-level/
まとめ
以上、EPMOについてご紹介しました。EPMOは組織の成功を支える戦略的な機能(部門)であり、プロジェクトマネジメントを超え組織の価値を創出することに貢献します。その導入と活用は体系的なアプローチ(戦略と整合したプロジェクトの取捨選択、優先順位付を実施するポートフォリオマネジメントのアプローチ)をベースとしたものになります。
プロジェクトやプログラム全体を取りまとめ、企業・組織の戦略実行に貢献する機能(部門)、それがEPMOになります。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。