皆さん、「プログラムマネジメント」という言葉を聞かれたこと、ありますでしょうか?
プロジェクトマネジメントはPMBOK®︎など世界各国をはじめ日本でもかなり浸透し、企業・組織だけでなくあらゆる場面で実行されていると思いますが、「プログラムマネジメント」は、未だあまり馴染みがないと思います。欧米をはじめ海外では、注目され普及しております。
近年、プロジェクトは増加し、大規模でかつ複雑化、不確実性の高いプロジェクト(正確には複数のプロジェクト)が多くなっております。このような状況において、プログラムマネジメントは必須になってきております。この記事では、「プログラムマネジメント」の概要についてご紹介します。
目次
プログラムとは
まず、プログラムの意味について、確認をしておきたいと思います。
プログラムと聞いて頭に浮かぶのは、ソフトウエアのプログラムや、テレビ番組のプログラム(TV Program等)、コンサートなどのプログラムですが、これら以外に、プログラムは(大きな組織などによる)事業計画や予定といった意味もあります。どちらかというと、プログラムマネジメントにおけるプログラムは、この意味に近いでしょうか。
プログラムマネジメントとは
近年、企業・組織では既存事業の維持・発展や新規事業の立ち上げなどを実施しており、プロジェクトが増加の一途です。また、プロジェクトは大規模かつ複雑になる傾向が顕著で、組織の戦略目標を達成するために、複数のプロジェクトを同時並行的に実行していることも多々あります。一つのプロジェクトで何らかの問題が発生すると、他の依存関係があるプロジェクトに影響が出ることなど良く聞く話だと思います。
このように、大規模で複雑化した状況では、複数のプロジェクトを束ねてマネジメントし組織の目標を達成していくことが求められております。プログラムマネジメントは、まさにこれらを体系的にマネジメントしていく手法になります。
プロジェクトマネジメントでは、プロジェクトの品質・コスト・納期(QCD)を管理しプロジェクトの目標を達成していきますが、このQCDを達成したとしても、組織の目標(経営戦略・経営計画など)にどう貢献したか曖昧ということはありませんでしょうか?
プロジェクト単体では、そのプロジェクトの成果が組織戦略(経営戦略・経営計画)に紐づかない(関連が見えにくい)ことも多くあるかと思います。このような場合は、複数のプロジェクトを束ねてプログラムマネジメントとして組織戦略に整合した成果を創出していくことが有効です。
概念は何となくお分かりいただけましたでしょうか。まだイメージが沸かないという方もいらっしゃるかと思いますので、次にプログラムマネジメントの例をご紹介します。
プログラムマネジメントの例
近年、多くの企業では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを実施されているかと思います。このDXですが、おそらく複数のプロジェクトが絡みあっている状況で、まさにプログラムではないでしょうか。例をご紹介します。企業・組織によって異なるとは思いますが、次のような事例を想定してみて下さい。
企業・組織のDXの目標(例):
これまでのアナログの業務から書類等含めデジタル化し、従業員の働き方を改革し、生産性を◯%向上させる。改善した工数を(既存の◯%削減し)より付加価値の高い製品創出やサービス提供に費やし、ビジネスの更なる成長につなげる。
このようなDXの目標を達成するには(企業・組織のおかれている状況によりますが)、単体のプロジェクトだけでは難しく、例として次のような複数のプロジェクトを立ち上げて実行していく必要があるかもしれません。
- 社内のワークフロー改善プロジェクト(承認プロセス変更・迅速化など)
- 業務ITシステム刷新プロジェクト(書類のデジタル化、デジタル承認など)
- 働き方改革プロジェクト(リモートワーク、オフィスのロケーション集約、他)
- 人材育成強化(デジタル人材育成・確保、JOB型定義、評価制度変更も含む)
- 組織変更(子会社等に分散したIT部署を統合、CoEを設立)
つまり、この例のDXはプログラムであり、そのプログラムの配下の相互依存関係のあるプロジェクトを束ねてコントロール・実行しDXの目標を達成する、まさに「プログラムマネジメント」が求められます。
なんとなくイメージ出来ましたでしょうか?
私は、日本の多くのPMの皆さんは、きっと上記のようなプログラムを(規模の大小はあるかと思いますが)多く経験されているのではと思います。「プログラム」と呼んでいないだけで、複数のプロジェクトを同時にまとめてコントロールし目標を達成されているケースは多いのではないでしょうか。
プログラムマネジメントに関する書籍
この記事では、プログラムマネジメントについての概要しかご紹介出来ていませんので、詳細を把握されたい方は、世界最大のプロジェクトマネジメント協会が発行しているグローバルスタンダードなどを読んでいただき理解を深めていただければと思います。次の書籍がありますのでご参考までに。
・プログラムマネジメント標準 第4版 日本語版(Project Management Institute)
ひとつ前の版ですが、PMI会員の方は購入せずとも、無料で入手が可能です。英語版だけでなく日本語版もPDFでダンロードが可能です。PMIホームページにログインのうえ、ご確認ください
・The Standard For Program Management Fifth Edition (Project Management Institute)
こちらは、2024年3月に発行された最新版です。上記と同様PMI会員の方はPMIホームページからPDFを入手出来ます。まだ英語版のみで日本語訳版の発行は未だ未定ですが2025年にはPMI日本支部から出版されるのではと思います。概要についてはクイックレビューとして記事を投稿しておりますのでご参照ください。https://p3moffice.com/2024/04/pgm-standard-fifth-quickreview/
・その他(参考図書)
また、2023年9月27日発売の拙著『プロジェクト・ポートフォリオマネジメントの教科書』は、プロジェクト・ポートフォリオマネジメントの解説本ですが、プログラムマネジメントを含め解説しています。ポートフォリオとプログラム、プロジェクトの関連や、第3章 ポートフォリオコンポーネントの実践手法では、プログラムマネジメントの概要、およびプログラムマネジメントの実践例を記載しております。是非ご参考にしていただければと思います。
プログラムマネジメントを実行する、上級PMのプログラムマネジャー
欧米各国、最近では中国、インドなども、このようなプログラムをマネジメントする人は、上級PMという扱いで、プログラムマネージャーと呼ばれ、PMの上位のキャリアとして活躍されています。(年収も、PMより高いケースが多く)外資系企業では、プログラムマネージャーという肩書きの方も多く存在します。
プログラムマネジメントの資格
また、資格についても、PMI(Project Management Institute)が認定している、Program Management Professional (PgMP)®︎ という国際資格があります。欧米をはじめとする世界各国ではPgMP®︎取得者が急激に増加しております。
日本ではプロジェクトマネジメントの国際資格であるPMP®︎を取得している方は多いですが、その上位に位置つけられるPgMP®︎資格をご存知の方は少なく、国内で保持している方は、徐々に増加しておりますが、まだ31名です(2024年6月16日現在:PMI Certification Registryより)。残念ながら欧米各国はもとより、中国、インドなどにも大きく遅れをとっている状況です。
日本のPMの方も、スキルや経験は決して世界各国に引けを取らない状況だと思いますので、興味を持たれた方は、是非、PgMP®︎資格に挑戦していただければと思います!
PgMP®︎資格については、以下の記事をご参照ください。合格までの道のりなどをご紹介しております。
以上、プログラムマネジメントの概要をお伝えいたしました。少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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