PMI(Project Management Institute)からプログラムマネジメント標準の最新版「The Standard for Program Management – Fifth Edition」(英語バージョン)が発行されました。私の手元にも届き、ざっと読みましたので、クイックレビューとして概要を皆さんにお伝えいたします。
私は、発行前のレビューに参加させていただきました。昨年にドラフト版を読んでおり、まったくの初見ではなかったので、比較的スムースに読むことができました。Appendix X3に、Contributors and Reviewersの記載がありますが、私の名前も載っていました!(ほんの少しですが発行に貢献させていただけたこと嬉しく思います)
それでは、まず入手方法からご紹介いたします。
目次
入手方法について
PMI会員向けに、2024年3月11日にPDFが公開されています。PMI会員は無料でPMIのホームページよりダウンロードが可能になっております。(PDFをダウンロードして読むことは可能ですが、印字やテキストのコピーは不可です)
https://www.pmi.org/pmbok-guide-standards/foundational/program-management-5th-edition
また、2024年4月1日にペーパーブック(および電子書籍)が発刊されました。Amazonから購入可能となっております。
外観について
外観ですが、写真のように、これまでの第4版とは表紙のデザインが一変しております。
左の写真が、The Standard for Program Management – Fourth Edition(ひとつ前の第4版)で、右側が、The Standard for Program Management – Fifth Edition (最新の第5版)です。お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、最新の第5版は、PMBOKガイド(最新の第7版)の外観を踏襲したデザインとなっています。
写真の右側が、PMBOK GUIDE Seventh Edition(最新の第7版)です。この後に記載しますが、今回発行されたプログラム標準は、PMBOKガイド第7版の内容と用語の統一など整合をとっているようです。
寸法は、22.23 x 1.78 x 27.31 cmです。写真右側のPMBOKガイド(第7版、英語バージョン)の厚さは1.52cmなので、若干分厚くなっています。紙の質も向上しているように感じます。
概要(クイックレビュー)
プログラムマネジメントは、P3Mオフィス®︎の他の記事でもご紹介しておりますが、戦略を達成するために、複数のプロジェクトを束ねて戦略に整合したベネフィットを創出するマネジメント手法です。戦略目標を達成し組織の成功を導く上で、プログラムマネジメントは極めて重要な役割を果たします。
今回発刊された「The Standard for Program Management – Fifth Edition」には、プログラムマネジメントを実践する上で、参考になることが多々記載されているという印象です。
構成
構成は以下のとおりです。
- Introduction
- Program Management Principles
- Program Management Performance Domains
- Program Activities
Appendix X1 Program Activities, Tools, and Techniques
Appendix X2 Fifth Edition Changes
Appendix X3 Contributors and Reviewers of The Standard for Program Management
(ページ数は、247ページ)
8つの原則
2章に、プログラムマネジメントを実践する上での8つの原則(Principles)が記載されました。これまでのプロセスベースから原則ベースの標準に移行されています。(PMBOKガイドも第7版で原則ベースに変わっています)
プログラムマネージャーやチームの行動の基本となるもので、戦略目標との整合を確実にするための原理原則という位置づけでしょうか。8つの原則は以下のとおりです。
- Stakeholders
- Benefits Realization
- Synergy
- Team of Teams
- Change
- Leadership
- Risk
- Governance
SynergyとTeam of teamsという言葉、あまり聞きなれないと思いますが、この第5版から登場している用語です。少し解説します。
- Synergyについては、プログラムを構成するコンポーネント(複数のプロジェクト)の複雑さや相互依存関係を継続的に確認・評価してプログラムを最適化していくという原則です。シナジーを創出し個々のプロジェクトで達成できる以上のものを創出するというものです。
- Team of teamsについては、関連するプロセスをとおして全体にわたるネットワーク関係を構築し、統合されたチーム構造をとるという内容です。共有された戦略に基づいて、複雑さや不確実性に直面するなか、団結してプログラムを実行していくという原則です。
6つのパフォーマンス領域(ドメイン)
3章に、プログラムマネジメントのパフォーマンス領域が記載されています。第5版から新たに ”Collaboration” が追加されています。
- Strategic Alignment
- Benefits Management
- Stakeholder Engagement
- Governance Framework
- Collaboration
- Life Cycle Management
Collaborationのパフォーマンス領域は、ステークホルダーとのシナジーを生み出し、ベネフィット創出を最適化するという内容です。他のパフォーマンス領域、GovernanceやTeam of teamsの原則とも関連し、全体に組み込まれています。プログラムを成功に導くコラボレーションの要因、ベネフィットや価値提供へ向けてのコラボレーションなどが記載されています。
アクティビティ
4章には、プログラムアクティビティとして、プログラムインテグレーションマネジメントやプログラムの各フェーズ(Definition Phase, Delivery Phase, Closure Phase)のアクティビティの記載があります。第4版以前の内容を踏襲しており、Appendix X1にはTools and Techniquesがあります。これらはプログラムマネジメントを実行する際に参考になる内容です。
所感など
外観だけではなく、PMBOK® ガイド(第7版)との整合がとられており、PMBOK®ガイドの知識に基づいて記載されている印象です。用語なども統一されています。全体的に、非常に読みやすく、PMBOK®︎を理解している人は、内容が頭に入りやすいと感じました。今後深く読み込んでいきたいと思いますので、随時アップデートしていきたいと思います。
ポートフォリオ マネージャー、プログラム マネージャー、プロジェクト マネージャー、PMO、プロジェクト関係者のいずれであっても、この最新版の「The Standard for Program Management」は必読だと感じています。組織の戦略目標を達成していくために活用できる内容が多くあります。
ぜひ皆さんも手にとって読んでみてください。英語ですが読みやすい内容になっていると思います。
その他
日本語版について
「The Standard for Program Management – Fifth Edition」の日本語翻訳版は、今後発行される見込みですが、現時点では時期など未定です。別途、判明次第お知らせ出来ればと思っております。
参考図書
「The Standard for Program Management – Fifth Edition」の第1章には、ポートフォリオ、プログラム、プロジェクト、およびオペレーションとの関連などが記載されています。
プログラムマネジメントは、企業・組織の戦略と整合をとり、プロジェクトのポートフォリオマネジメントおよび配下のプロジェクトマネジメントと連携して実行していきます。以下の図は、私の方でイメージを表現したものです。
2023年9月に出版した「プロジェクト・ポートフォリオマネジメントの教科書」には、戦略整合の観点で、ポートフォリオ、プログラム、プロジェクトの関連、プログラムマネジメントの概要や実例などを含め解説しておりますので、あわせてお読みいただけると理解が深まると思います。ご参考までに。
PgMP資格について
PgMP(Program Management Professional)®︎資格についてですが、資格取得にチャレンジされる方は、最新版の第5版を読み込むことが必要となります。試験範囲や申請内容などが、第5版発行に伴い若干変更となっております。別の記事に投稿しておりますので、PgMP資格の取得を考えておられる方はご覧ください。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
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